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もう一つの法律事務所

 もう一つの事務所は少し離れた場所にありました。
「離婚なんてことがなかったら、これまでの日常が続いていたのになあ。」
日常が変わらないということは、明日も同じような日が来ることが保証されているということで、その保証のなかには、住む家があることや働く場所があることが大きいんだなと思いました。そのいずれも、「自分の」おうち、「自分の」しごと、という風に、「自分のもの」という安心がそこにはあります。それが、今の自分には無くなろうとしている。この不安が、ふとした瞬間に押し寄せてくる時があり、息がハアハアと苦しくなります。
 2件目の法律事務所のインターフォンを押す前に、またこの不安が押し寄せ、フラッとしてしまい、倒れないように壁をつかんで落ち着かせました。

 2件目の弁護士の先生は、男の先生で、私と同じくらいか少し上、50歳前後にお見受けしました。
土曜日だったので事務員さんがおられなかったのですが、温かいお茶を入れてくださいました。それだけでも、なんだかとても嬉しかったです。
 1件目の法律事務所で話した内容を、同じように聞かれたため、これまでの経緯を一通り話しました。
でも、1件目の先生と違ったことは、現状はどうなっているのかということを、子どもたちの様子も含めて丁寧に聞いてくださったことです。夫が主張している以下のようなことも、今の一軒家に住んで5年ほどになりますが、6年前のものだということを確認されました。(「虐待」という言葉を夫は使ってきましたが、もちろん私にはその認識はありません。)

(ひとつ前の記事より抜粋) 夫が主張する離婚事由は、大きくは以下のようなことでした。
 ・夫は、私の継続的な無視や、自分が精いっぱいやってきた家事育児を認めようとしなかったため、離婚したい
 ・夫は、特に息子に対する私の虐待を許すことができず、その原因は夫婦関係が悪いことにあると考え、離婚したい

 そして、先生は未来の話もされました。
「これからどう生活したいのですか?}と。
 私は、答えました。

 ・子どもたちと暮らしたい。
 権利として、親権や監護権を得て、シングル(独身)ではなく、シングルマザーとして、子どもたちと生活したいです。
 ・子どもたちが好きに夫に会うことでよい。
 子どもたちが夫に会うことは私が決められることではなく、離婚ということで、私は、子どもたちから、平穏な家庭ということを奪ってしまった、その上、夫婦がこうなったからといって、お父ちゃんには月にこれだけしか会ってはいけないというようなことで、父親までをも奪うことはできないと思っています。子どもたちが会いたいと言ったときには、いってらっしゃいと、いつでも見送ってあげたい、今はそう思っています。

 付け加えたのが、今の自分にどんなことが主張できて、どんなことが実現できるのか、全く分かっていませんので、気持ちとしては、このような二つのことです、といって話が終わりました。

 1時間の無料相談のはずが、1時間50分も経っていました。

 先生は最後に言いました。
 「離婚は、こうですよというやり方もできるけれど、どうしたいのかということで、いかようにも結論を決めることができます。ただし、夫婦の同意があれば、ですよ。」と。
 でも、なかなか離婚をするような夫婦が、話し合いでお互いのちょうど真ん中あたりをとり、それに同意するというようなことは、実際は難しそうだなと思いました。結局は、お互いの主張をぶつけ合うということになるんだろうなと、この先のことが怖くなりました。
 そして、先生は続けました。
「弁護士が入ることで、相手が警戒をしさらに夫婦の関係に亀裂が入り難しくなる、というようなこともある。そのため、とても慎重に進める必要があります、そして、いろんなシナリオを描いておいて、最悪と最高をしっかりとイメージし、弁護士と一緒にやっていく必要がありますよ。厳しい時もありますので、このようなことを包み隠さず話せる人はいますか?」と。

 私は、この最後のやりとりがとても人間的で、この先生が好きになりました。法律ではこう、というある一つの基準を示しながらも、どうしていきたいのかという気持ちの面や、相談できる人が居るかどうかという私の精神面や、子どもたちの様子も気遣ってくださいました。

 この先生にお任せしたいなと思ったのですが、でもまだ、迷いがありました。迷いというのは、夫とできれば話し合いで解決できないか、裁判のようなことを避けたいな、それにかかる費用も膨大だしな、という気持ちがあったからです。なので、一旦帰宅することにしました。

 この頃から、離婚において問題となる項目を勉強するようになりました。離婚で、上に書いたような二つのことを主張したいと私は思っている現状だけど、もっと他にも考えなくてはいけないことがありそうだな、ということが、なんとなく先生との会話で分かってきたからです。何を考えなければいけないのか、その項目も知らなければ、自分がどうしたいのかということも考えられていないのと同じです。
 次回は、この離婚において問題となる項目を整理し書きたいと思います。

 読者さまへ 
 
 これまで、読んでくださって、本当にありがとうございます。
 読んでいて、しんどくなりませんでしたか?
 重たかったですよね?
 感情的な面を書いてばかりいました。
 そして、自分は自分はとなっていたと思います。
 ごめんなさい。
 でも読んでくださって、こうしてここまでお付き合いくださって、聞いてくださって、ありがとうございます。
 この場所があってよかった、本当に思います。
 これからも、どうぞよろしくお願い致します。

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